札幌教会・日本キリスト(基督)教団・プロテスタント教会

北海道札幌市中央区にある伝統的な教会

聖書のお話し

「一粒の麦 地に落ちて実を結べば(ヨハネ34)」

更新日:2022.8.16

ヨハネによる福音書第12章20-26節

小林克哉牧師

『塩狩峠』は三浦綾子さんが実在の人物であったキリスト者青年長野政雄さんを題材にして書いた小説です。国鉄職員であった彼は、教会へ向かい列車に乗っていました。塩狩峠に来たとき、ブレーキの故障なのか、列車が暴走し始めたのです。彼は列車から飛び降り、車輪の下に自分の身を投げ出しました。列車が停まり多くの人が救われたのでした。三浦綾子さんは主人公の姿に、イエス・キリストに従う者の姿を見たのかもしれません。赤の他人のために命を捨てるのです。『塩狩峠』の最初の頁にイエスさまのこの御言葉が記されています。「一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままである。だが、死ねば、多くの実を結ぶ。」(24節)
イエスさまは「友のために自分の命を捨てること、これ以上に大きな愛はない」(第15章13節)と言われ、弟子たちに「あなたがたはわたしの友である」(第15章14節)と言われました。弟子たちは師であり主であるイエスさまが「友」だと言われ驚いたことでしょう。友とは特別な存在です。一人一人との思い出が違い、一人一人の顔が違います。「多くの実」(24節)と言われていますが、その他大勢ではありません。イエスさまは一人一人の顔を見ておられるのです。その「多くの実」のために一粒の麦は地に落ちて死なれると言うのです。
このイエスさまのお言葉の背景にはイザヤのメシア預言があると言われます。人々のために苦しみを受け、その罪を負われ神の裁きを受けるメシアの預言です。「彼は自らの苦しみの実りを見/それを知って満足する。/わたしの僕は、多くの人が正しい者とされるために/彼らの罪を自ら負った。」(イザヤ書第53章11節)その救いを、その実りを見て喜ばれるのです。一粒の麦イエスさまは命を捨てられるのです。
イエスさまは「わたしの命よりも、あなたの命のほうが大切である」と言ってくださるお方です。わたしたちも親子や夫婦、家族の間柄の中で、そのような愛があると聞くと感動するものです。しかし聖書が語っているのはそれらとは違う愛です。赤の他人のため、いやそれどころか背き逆らう者のために、友となって命を捨てる愛、アガペーです。その愛でわたしたちは愛されているのです。アーメン

(2022年7月31日礼拝説教より)

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