「読者は悟れ」
更新日:2018.5.7
マタイによる福音書24章15-28節(新約P47)
牧師 米倉 美佐男
「そして、御国のこの福音はあらゆる民への証しとして、全世界に宣べ伝えられる。それから終りが来る。」(24章14節)
「終わりが来る。」この言葉に続いて主は言われます。「預言者ダニエルの言った憎むべき破壊者が、聖なる場所に立つのを見たらー読者は悟れーそのとき、ユダヤにいる人々は山に逃げなさい。」(16節)さらに、屋上にいる者は荷物を取りに行こうと下へ降りるな、畑にいる者は服を取りに家に戻ってはいけない。その日にその出来事に遭遇した妊婦や、ちいさな子を育てている母親は不幸だ。逃げる時が冬、あるいは安息日に起こらないように祈れと。
「預言者ダニエルの言った」と引用されている預言はダニエル書の11章、12章に記されています。憎むべき破壊者とは11章31節、12章11節に出てきます。具体的には主なる神ヤーウェ以外を信じる者を指しています。歴史的な出来事は紀元前167年12月にシリアのセレウコス王朝のアンテオコス4世がゼウスの祭壇をエルサレムに立てました。それはユダヤ人にとっては大きな屈辱でした。紀元70年にはローマ軍の総司令官ティトスによってエルサレムは陥落します。その時、神殿は崩されました。その残滓が現在の西の壁(嘆きの壁)です。
聖なる場所とはエルサレム神殿です。言わんとされているのは、神殿は大事だがそれは神ではないのだから絶対ではありません。だから神殿自体にしがみつくのではなく、身の危険が迫り危なくなったらすぐ逃げろと言われていることです。身体だけでなく、信仰的危機も含んでのことです。いうなら本当にこだわるべきものは何かということです。「読者は悟れ」の読者とはキリスト者を指しています。信仰者が心せねばならないことは、主イエス・キリストが罪の救いのために終末の審判者として来て下さるという信仰の事実です。そこに固く立つことが求められているのです。
(2018年4月29日主日礼拝説教より)