「かまわないでくれ」
更新日:2016.10.17
マタイによる福音書8章28-34節(新P14)
牧師 米倉 美佐男
「神の子、かまわないでくれ。まだ、その時ではないのにここに来て、我々を苦しめるのか。」(29節)
主イエスは伝道活動を故郷のナザレのあるガリラヤ地方で精力的になさり、カファルナウムから舟に乗り対岸に渡られました。その地はガダラ人の地でした。カファルナウムからは方向的に東南方面、ガリラヤ湖の東岸になります。異邦人の町、外国人の多く住むところです。そこでイエスは二人の悪霊に取りつかれたものと出会います。
この二人は非常に凶暴でだれも彼らの前を通れないような危険な存在でした。住んでいるところは墓場です。それだけでも異常さは分かります。きっとそのような所にしか彼らの居場所はなかったのです。社会からはじき出された二人がイエスの前にまかり出て、会うや否や言うのです。「神の子、かまわないでくれ。まだその時ではないのにここに来て、我々を苦しめるのか」(29節)。彼らはイエスを神の子と呼び、その時ではないと言い、苦しめないでくれと願います。
そこに多くの豚の群れがいました。悪霊どもは「我々を追い出すのなら、あの豚の中にやってくれ。」(31節)とイエスに頼み、イエスは「行け」と命じます。すると、悪霊は二人から出て、豚の中に入り、崖から下って湖になだれ込み、水の中で死んでしまいます。神の子が権威を持って命じると悪霊は出て行くのです。それがここのメッセージです。先に風や湖、自然をみ力によって支配された主は、ここでは霊の世界も支配するお方です。最後に記されるのは、町中の者が主イエスのもとに来て、この地方から出て行ってもらいたい、と頼みます。町の人たちは悪霊退治より、自分たちの生活の安定を望みました。神の子イエスに従うより、現実の生活の安定の方を選ぶのです。主の教会は嵐の中でも、悪霊の満ちた社会の中でも、ただ主に従って歩むのです。主によって自由になれた喜びを味わい、恐れではなく、感謝をもって主を宣べ伝えるのです。
(2016年10月9日主日礼拝説教より)