「あなたのほうが大切です(マタイ㉞)」
更新日:2024.11.5
マタイによる福音書 第8章28-34節
小林克哉牧師
イエスさまはカファルナウムから向こう岸へと渡って来られました。嵐の湖を渡り、危険を冒してまで来られたのはこの二人と会うためでした。「悪霊に取りつかれた者が二人、墓場から出てイエスのところにやって来た。二人は非常に狂暴で、だれもその辺りの道を通れないほどであった。」(28節)真の神を知らない異邦人、町の人からは嫌われ、死を象徴する墓場に追いやられていた人。イエスさまはこの人たち目掛けてやって来られたのです。
悪霊に取り憑かれていた人たちは言いました。「神の子、かまわないでくれ。」(29節)自分たちと何の関わりがあるのかと言うのです。確かにイスラエルに遣われたメシアにとっては何の責任もない人たちかもしれません。しかしイエスさまはこの人たちにわざわざ会いに来られたのです。
この二人を支配していた悪霊が言います。「我々を追い出すのなら、あの豚の中にやってくれ」(31節)。イエスさまはその願いをきかれました。「イエスが、『行け』と言われると、悪霊どもは二人から出て、豚の中に入った。すると、豚の群れはみな崖を下って湖になだれ込み、水の中で死んだ。」(32節)この二人が救われるために大量の豚が代わりに犠牲となったのでした。
ユダヤ人にとって豚は汚れた動物とされていましたが、ガダラ人の地方の人々にとって豚を飼うことは生業であり、豚は大切な財産でした。町の人々にとってはこの二人より豚の方が大切です。このようなことをするイエスさまのところに来て、町から出て行ってほしいと言ったのでした。
イエスさまは豚や財産より、この二人が救われることを選ばれました。この二人に対してだけではありません。イエスさまはわたしたちに対しても「あなたのほうが大切です」と言ってくださるのです。いいえ、豚どころではありません。神はその最も尊い御子を犠牲にしてくださったのです。イエスさまは「わたしよりあなたのほうが大切」とし、十字架へと向かわれたのです。十字架の犠牲に示された神の愛が人を悪しき力から解放し、罪赦され神と和解し、永遠の命の約束に生きることを可能とするのです。アーメン
(2024年10月27日礼拝説教より)