「敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい」（44節）と命じられるのは、他の人ではなくイエスさまです。イエスさまがこの御言葉に生きられたのです。イエスさまは十字架につけられた時こう祈られました。「父よ、彼らをお赦しください。自分が何をしているのか知らないのです。」（ルカ福音書第23章34節）イエスさまは神の国の福音を宣べ伝え続け、神の国へと招き続けられました。自分を迫害し殺そうとする者、いや殺す者を愛し続けられたのです。イエスさまの説教に耳を傾けようとしないファリサイ派や律法学者たちにも、「悔い改めなさい」と招き続けられたのでした。
使徒パウロは以前キリストの教会の迫害者、神の御心を妨げる者でした。そんなパウロが十字架の愛で罪赦され、洗礼により神の子とされました。パウロは言います。「わたしたちがまだ罪人であったとき、キリストがわたしたちのために死んでくださったことにより、神はわたしたちに対する愛を示されました。････敵であったときでさえ、御子の死によって神と和解させていただいたのであれば、和解させていただいた今は、御子の命によって救われるのはなおさらです。」（ローマ第5章8,10節）
このわたしが神の敵、天の父の御心を妨げる者であったことに気づくとき、神の愛がわかってくるのです。神は敵であったわたしを愛し、身代わりとなって十字架で死んでくださった。愛すべきところがない者が愛されたのです。愛したらきっとその人も分かってくれて変わり愛に応えるようになってくれる。だから愛そうというのでもないのです。一方的に与えるアガペーの愛、見返りを求めない愛です。愛の極みが敵への愛なのです。わたしたちはその神の愛を受けているのです。だから････。
〝敵〟を愛しなさい。天の父の子だからです。イエス・キリストのものとされているからです。天の父の完全さに生きなさいと言われるのです。やはりそのようなことはできないかもしれません。それでも、天の父の子とされたのだから、そう生きようとするのです。聖霊に助けられ、御言葉に導かれ、敵を愛する者にしていただきたいのです。アーメン