「聖書に書いてあるとおりに」
更新日:2020.9.4
マルコによる福音書14章10~21節(新約91頁)
田村敏紀 神学生
「人の子は、聖書に書いてあるとおりに、去って行く。」(21節)
ベタニアという田舎町で、イエスへの弔いのために一人の女が香油をイエスに注ぎかけます。弟子のユダは、「香油を高く売って、貧しい人々に施すことができた」と女を責めます。しかしそれは、社会正義を唱えながら、その実、金銭的不正とエゴイズムから出た発言でした。
しかしイエスに想定外の死刑が下されると知ったユダは、「わたしは罪のない人の血を売り渡し、罪を犯しました」と言います。イエスを「罪のない人」、すなわち神の子と認めたわけです。そして自殺します。当時、自殺は自己の潔白を証明する手段でもありました。そうすると、ユダは自らの死を通して、イエスへの信仰を語ったと、言えなくもないのです。
イエスの周りを走り回るユダに対して、主イエスは「聖書に書いてあるとおりに、去って行く」と言うだけです。主イエスが生まれる500年以上前に書かれたイザヤ書53章には、次のように記されています。「彼は軽蔑され、人々に見捨てられ、……彼の受けた傷によって、わたしたちはいやされた。」
(2020年8月30日礼拝説教より)